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2020年5月19日 Article 4 min read

COVID-19パンデミックは、山火事のように、世界の経済情勢全体に影響を与えています。移転価格ポリシーを持つ多国籍企業は、移転価格戦略の背後にある前提を修正し、サプライチェーン全体で適切に損失をマネージするために、迅速な対応が求められています。

COVID-19パンデミックにより、国際ビジネスの状況は大きく変化しました。関連者間移転価格ポリシーを有するすべての企業は、ポリシーが現状に適したものであることを確認する必要があります。需要の変化とサプライチェーンの混乱により、移転価格の前提となる事実が大きく変更している可能性があります。影響を受けた企業は、関連者間移転価格ポリシー基盤となる構成要素を再検討し、新しい現状を反映するために、必要な修正を加える必要があります。

移転価格の文書化が鍵

移転価格ポリシーを変更する際に覚えておくべき最も重要なことは、移転価格変更の妥当性をサポートしなければならないということです。税務当局は、COVID-19が全世界で企業や個人に影響を及ぼしたことを認識しています。しかし、当局が、すべての最悪のシナリオを受け入れるとは限りません。多くの企業が関連者間の価格設定とマージンを設定するために使用するベンチマーク、標準、および指標は、間違いなく、この期間に異常とも言える動きをしています。従って、移転価格ポリシーの変更がこれらの変化に沿った妥当なものであることを、移転価格文書化を通してサポートする必要があります。

移転価格ポリシーを変更するときに覚えておくべき最も重要なことは、移転価格変更の妥当性をサポートしなければならないということです。

税金関係項目(例:繰越欠損金)はどこに?

一般に、移転価格設定モデルは企業が利益を上げることを前提として構築されています。また、特定の国に収入を集中させることは決して珍しいことではありません。たとえば、特定の製造業に税制上の優遇措置がある国や企業が本社を置いている国に収入を集中させることがあります。

パンデミックは短期間でその前提を大きく変えました。多くの企業では世界経済が回復し始めるまで生き残るために、不可避な損失を最小限に抑えることが目標となっています。一般に、税務当局は自国内に存在する企業から生じる営業損失に対して懐疑の目を向けます。このような営業損失は、パンデミック期間中継続する可能性があります。影響を受ける企業は、全世界規模での損失の妥当性を文書化し、移転価格ポリシーの許容範囲内で、営業損失に掛かる税法が比較的寛大な国に損失を集中させるプランニングをするべきです。その際には次のようなことを考えるべきです。

  • COVID-19の影響を激しく受けている関連者の損失または現金不足をカバーするために、収益が保証されている別の関連者の利益を減少させる方法があるか?
  • 現在の移転価格ポリシーは、特定の国における損失の妥当性を適切にサポートするものになっているか?

リスク限定販売子会社のある国では、パンデミックがリスクの範囲を根本的に変えてしまったのかもしれません。例えば多国籍企業の世界全体収益が3分の1減少してしまった場合、リスクが限定されたグループ企業も比例して収益が減少してしまってもおかしくはありません。従って、業界によってはリスク限定的子会社であっても不況時には利益が出ないことがありえます。

COVID-19により移転価格ポリシーの前提条件が大きく変わったもう一つの分野は、ロイヤリティの支払いです。通常の状況では、30%のマージンを得ている関連者から無形資産を保有する国外関連者への25%のロイヤリティの支払いは、非常に理にかなっているように思えます。ところが、長年にわたって確立されてきた予測を大きく下回っている現在の状況では、25%のロイヤリティを国外関連者に支払うことにより損失が生じる可能性があります。「所得相応性」基準では、このような状況下ではロイヤリティ率を企業グループ全体の利益と同調させるべきであり、ロイヤリティ率の再交渉が適切であることを示唆しています。

COVID-19による変化

COVID-19パンデミックは、下記のような物流における変化も引き起こしたため、移転価格戦略に反映させる必要があるかもしれません。

  • 従業員国外出向の限定:多くの多国籍企業は、パンデミック時の従業員の安全を守るために、国外に住む従業員を帰国させています。パンデミック収束後も、それらの従業員は母国に留まり、多国籍企業の国外での活動を減少させるかもしれません。
  • サプライチェーンの混乱:COVID-19のような危機への外国政府の対応に基づいて、企業が将来どこで製品を生産したり、購入したりするかを再考すべきかもしれません。
  • 移転価格税制に関する事前確認(Advanced Pricing Agreement: APA)の前提条件の変更:税務当局とAPAを締結した企業は、合意書の基本的な前提条件の変更に基づいて再交渉を検討すべきかもしれません。

COVID-19パンデミックは、物流における変化も引き起こしたため、移転価格戦略に反映させる必要があるかもしれません。

弊事務所にできること

COVID-19による経済状況の変化により、間違いなく関連者間における移転価格設定の詳細な見直しが必要となるでしょう。より有利な国への損失の再分配、米国税関当局の価格調整プログラムを通じた恩恵、あるいはファーストセール制度の導入等、パンデミックの影響を大きく受けた現在の経済状況の下、移転価格の見直しは必須と考えます。

詳しくは、プラントモランのアドバイザーにお問い合わせください。