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食料品店の通路で商品を見ている人
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SKU合理化の技術 : 正確な原価計算データの取得

2024 年 4 月 22 日 / 5 min read

自社の製品への需要が生産能力を超えていたり、頻繁な切り替え作業が生産性の低下を招いていたり、煩雑性のためにコストが上昇してしまったり、価値創造の機会を見極めるよう求められたり・・・。このようなことが当てはまる場合、在庫管理単位(SKU)を合理化することで見事に解決ができます。基盤となる最も正確な原価情報の構築に着手するための5つの検討事項をご紹介します。

多くの企業は顧客の要望に応じて新製品を安易に開発しがちです。しかし、SKUの増加を放っておくと、小ロット生産の増加、製造工程でのセットアップ回数の上昇、追加的な管理業務などを通して、時間が経つにつれてのビジネスが煩雑になるおそれがあり、そのことでコストは増大し、全体的な収益性は低下します。このような状況に心当たりがあるなら、SKUの合理化を検討する時期が来ているのかもしれません。 

最も基本的な意味において、SKU合理化とは、製品ラインの能率を上げ、組織の収益性を向上させることを目的として、どの製品を維持(または改善)し、どの製品を廃止するかを決定する在庫管理プロセスです。主な推進要因は通常、スペースの優先順位付け、イノベーションの時間、価格の最適化であり、キャッシュフローの改善、投下資本利益率(ROIC)や粗利益率の向上という全体的なビジネス目標が伴います。 

では、どこから始めるべきでしょうか?SKU合理化を成功させるカギは、製品の正確な原価情報と販売データから着手することです。あまりにも多くのケースでSKUの合理化が最適化されず、最終的に失敗に終わるのは、重要な意思決定が製品の不正確な原価計算データに基づいて行われる、すなわち「ゴミからはゴミしか生まれない」ためです。成功させるためには、正確な製品マスターデータに基づきマルチチャネル分析に統合された、各製品についての詳細なマージンデータが必要です。 

あまりにも多くのケースでSKUの合理化が最適化されず、最終的に失敗に終わるのは、重要な意思決定が製品の不正確な原価計算データに基づいて行われる、すなわち「ゴミからはゴミしか生まれない」ためです。 

SKUの合理化に取り組む際に考慮すべき5つの主な原価計算データ項目は以下の通りです。

1. 部品表と加工過程の正確性の確認 

製造環境において部品表と加工過程は原価の決定要因であり、それが不正確であれば、人員配置や、意思決定、見積、在庫評価に影響が生じます。人員配置においては、ERPシステムのデータ品質が悪いため、工場のスケジュール管理、資材購入、稼働率分析にシャドーITやスプレッドシートを使わざるを得ないことがしばしばあります。 これにより不要な設備を購入したり、過剰に在庫を仕入れたり、シャドーITを管理するための余分な人員を雇用するかもしれません。SKUの合理化を検討する際、廃棄率・歩留まり・副産物・原料費・入荷運賃・関税に対する仮定が不十分であれば、原料費に対する仮定が左右されます。切り替え作業の時間を考慮しなければ、大量部品が、少量部品における切り替え作業のOEE(設備総合効率)の影響を補填することになります。 不正確なサイクルタイム、サイクル当たり個数、人員配置によって、SKUのコストとマージンは著しく過大または過小に評価されるおそれがあります。この不正確さは、総じてコスト増加を生じさせ、SKUの合理化についての誤った意思決定にもつながります。 

2. 労務費の算定

労務費はSKUコストの重大な要素です。多くの場合においてコストの中で最大の変動要素であり、その算出方法が多岐にわたるため、製品の総原価に組み込む際に誤りが生じることが少なくありません。工場全体で労務費を平均化している場合、特定の作業に賃金の高い専門技能が必要な場合はどうしますか? 労務に付随する費用は労務費として計上されますか、それとも間接費に含まれるでしょうか? 労働力にはどの程度の生産性があり、生産性は、製品構成やその他の要因に左右されますか?残業は需要の高まりや顧客の注文パターンに応じて発生しますか?これらはすべて、SKUごとの労務費を大きく変動させる重要な問いです。

3. 間接費の配賦

間接費のSKUへの配賦方法は非常に重要です。ほとんどの間接費は因果関係や相関関係に基づいて配賦でき、SKUや工程に直接配賦するのが理想です。すべては労働時間によって決定されるのでしょうか?機械の稼働に基づく費用は、労働時間に基づく費用とは分けて配賦されるのでしょうか? SKUが増えることに伴う費用、すなわちサプライチェーン、在庫保管コスト、セットアップ時間、および顧客・チャネル・業界の変化に基づく製品カタログ拡充コストは、工場全体に「ピーナッツバターのように均等に分散」されますか?適切な要因に基づいてこれらのコストを配賦することで、SKUのコストとマージンの可視性が大幅に向上します。

4. 変動貢献利益と総粗利益率の測定

変動費と固定費を分けて理解することが重要です。例えば、固定費を変化させずにSKUやチャネルを廃止した場合、実際よりも多くのコスト削減が実現したように見えることがあります。SKUを変動貢献利益の観点から分析し、固定費および設備・施設費を検討した上で、収益性が低く廃止すべき製品を見極めます。 場合によっては、コストは削減できなくても生産能力に余力が生じることがあり、そのリソースを、他の製品やプロジェクトに振り向けることができます。粗利益率はマイナスでも貢献利益がプラスのSKUは、短期的に、しかしより収益性の高い製品に置き換えられるまでの期間に限り維持する価値があるかもしれません。

5. 顧客サービスコストの分析 

多くのコストはSKU自体ではなく、顧客とチャネルを支えるコストによって発生します。販売先が自動車OEMであるか、病院や、大型小売店・食料品店であるか、または消費者へ直接販売するかに関わらず、各チャネルには様々な階層のチャネル管理コストが存在します。個々の顧客についても同じくそれぞれが固有であり、発注期間、納期、配送費に応じてコストへの影響は様々です。チャネル管理コストも顧客管理コストも、単に販売費および一般管理費として計上していないでしょうか?個々のSKUや顧客関係全体の収益性を判断する際には、それらを分けて検討していますか? 

SKUの合理化は、適切に実行されれば、利益率を大幅に高める可能性があります。品質の良いデータが手に入れば、データ分析ツールを活用し、その原価情報は貴社に利益をもたらします。

コストだけでなく市場にとって最適な選択という観点からもSKUの収益性データを分析しなければなりません。

コストマージン分析やデータ分析により、市場に基づくシナリオの中でSKU・チャネル・顧客マージンを迅速に把握できます。これによって、価格の改定や、製品の廃止、製品・チャネル・顧客開拓への追加投資を判断するための時間を確保できます。 しかし、SKUの合理化からもれなく利益を得るためには、コストだけでなく市場にとって最適な選択という観点からもSKUの収益性データを分析しなければなりません。  例えば、製品ポートフォリオの充実、見込顧客への販売基盤の確保、貢献利益を維持するための生産能力の活用、製品の潜在性の検証といった戦略的理由から赤字または利益率の低い製品を維持することが合理的である場合があります。こうした状況では、SKUの合理化プロセスで生成された優れたデータを活用することは、情報に基づいた意思決定を行い、SKUパフォーマンスを継続的にモニタリングし、利益への継続的な影響を評価するために非常に有効です。 

SKU・製品・顧客・チャネルの合理化についてさらにお尋ねになりたい場合は、当社までお問い合わせください。

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